大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和47(あ)416 判決

主 文

原判決を破棄する。

本件を福岡高等裁判所に差し戻す。

理 由

弁護人木下秀雄の上告趣意は、憲法一四条違反をいう点もあるが、その実質は、

すべて単なる法令違反、事実誤認の主張であつて、適法な上告理由にあたらない。

しかし、所論にかんがみ、職権で調査すると、原判決が是認した第一審判決は、被

告人が昭和三六年七月二〇日AがBから買い受けた山林立木の代金の内金三七〇万

円の債務をCとともに保証するため、額面金一五〇万円および二二〇万円の約束手

形二通をA、Cと共同で振り出したが、その後右各手形の所持人となつたD有限会

社代表取締役Eから右各手形金の支払の請求を受けるや、その強制執行を免れる目

的をもつて自己所有の不動産につき仮装の譲渡および抵当権設定をしたと認定して

いる。しかしながら、B対被告人間の本件約束手形金債務の履行を求める訴訟の第

二審である福岡高等裁判所昭和四五年(ネ)第四三二号約束手形金請求控訴事件の

判決が、Cおよび被告人は本件各約束手形の振出に関与しなかつた事実を認定した

ことは弁護人提出の上告趣意補充書に添付の右事件の判決謄本に徴し明らかであり、

本件記録中の証拠を検討すると、被告人は本件売買の立会人として売渡証に署名押

印したが、使用目的を確認しないで自己の印章をBの長男Fに交付したことがある

に過ぎないことが窺われないわけでなく、原審の前記認定には、被告人の右印章交

付の理由の真意を探究しないで事実を誤認した疑いありといわざるを得ない。しか

も、この誤認は本件犯罪の成否に影響を及ぼすことが明らかであり、これを破棄し

なければ著しく正義に反するものと認められる。

よつて、刑訴法四一一条三号、四一三条本文により、本件を原裁判所である福岡

高等裁判所に差し戻すこととし、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

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検察官田村秀策 公判出席

昭和四八年六月二六日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 関 根 小 郷

裁判官 天 野 武 一

裁判官 坂 本 吉 勝

裁判官 江 里 口 清 雄

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